みなさん、運動会の練習、がんばっていますね。月曜日、朝会で私が言ったことを覚えていますか。
勝負には勝者もいれば、敗者もいる。勝者は敗者をたたえ、敗者は勝者を祝福する。そんなことを言ったつもりです。「勝った」「負けた」はあるでしょうが、勝負のあとはお互いにたたえあいましょう。
さて、私が月曜日、出張で、おもしろい講演を聞きました。脳科学者の池谷裕二さんという人の話でした。おもしろかったので、池谷さんの本を検索し、私の好きな絵本作家のヨシタケシンスケさんが絵を描いた本があったので、読みました。それが「もやもやそうだんクリニック」という本です。これは、ある学校の3年から6年までの子どもたちが池谷さんに質問をして、それに池谷さんが答えたものをまとめた本です。
こんな質問がありました。「簡単に暗記する方法はありませんか」私なら、ドラえもんにたのんで、暗記パンを出してもらうなんて、答えそうです。池谷さんはこう答えました。
残念ながらありません。人間の脳はゆっくりあいまいに覚える性質をもっているそうです。脳が発達していない動物は、見たものをそのまま記憶する力は高いが、なかなか応用がきかない。でも、人間の脳は表面に見えている情報だけではなく、その奥にあるさまざまな情報をつなぎ合わせながら、状況をとらえようとします。そのために学習に時間がかかるそうです。
算数の公式を覚えるのにどんな方法がいいか。
①「公式を何度も目で追う」 ②「学んだ公式を何度も声に出して読む」 ③「学んだ公式を何度も書き出す」 ④「公式が出てくる問題をなんどもとく」
4つの方法を比較する前に、2つの単語を覚えてください。知識や情報を脳に取りこむことを「入力」、反対に、一度取りこんだ知識や情報を外に出すことを「出力」といいます。
①は入力だけ、②は読むだけでなく、声に出しているので、両方、③と④も両方ですが、④の方が実際に問題をといているので、知識を使う回数が多いです。脳は、知識や情報が入ってきたとき、それらを記憶した方がいいか、忘れた方がいいかを考えます。そして、使う機会が多いほど、「覚えておこう」と思います。だから、効果的な勉強方法は④になり、④→③→②→①の順番で効果が小さくなります。
もう一つのポイントは「公式がどうして生まれたか」という理屈や背景を知ることだそうです。複雑な公式の成り立ちをたどるには、調べる時間もかかります。でも、そのことにより、脳は「この情報は大切だ」と思うことができます。まったくおすすめできないのが丸暗記。テストの前の夜にいっきに覚えて、いい点数をとっても「記憶にとどめておく情報」として脳に定着していないので、応用がきかず、忘れやすいそうです。すぐに覚えられなくても、ゆっくり覚えることが大切だそうです。
モヤモヤそうだんクリニック 池谷裕二(文) ヨシタケシンスケ(絵) NHK出版 参考