企業視察

2000年6月26日(月)
13:30〜17:00
大同特殊鋼株式会社 知多工場

鉄を造る“鉄人”たちに感動!

1.敷地の広さにビックリ!(以下の画像をクリックすると、拡大表示します)
名鉄の太田川駅に着いた私たちは、そこからはタクシーで工場まで向かいました。工場の正門までは、数分の距離でしたが、正門から事務所までが、これまた長い距離!構内の移動に自動車は不可欠です。今日訪れた「大同特殊鋼株式会社 知多工場」は、世界でも有数の敷地面積を誇り、東西は600m、南北は2000mにもおよびます。単純計算で120万uですが、これはナゴヤドームが35個も入ってしまう広さです。想像を超えたスケールであることが、おわかりでしょう。 構内は専用バスで移動

2.特殊鋼ってな〜に?
さて、ここで少しだけ、お勉強です。社名にもなっている「特殊鋼(とくしゅこう)」ですが、一体特殊鋼とは何なのでしょうか?・・・簡単にいうと「鉄の一種」です。でも、普通の鉄ではありません。普通の鉄を造る(製鋼)の最初の段階で、ある一定の物質を混ぜることにより、出来上がった鉄に特別な性質を持たせます。強度を増したり、加工しやすくしたり、熱を伝えにくくしたり・・・などなど、顧客のニーズに合わせた鉄(合金)を造る、それが特殊鋼の仕事なのです。大同特殊鋼では、その高い技術力を活かして、今では幅広い業界へ対して、高品質な特殊鋼を提供しています。主な取引先に本田技研工業(株)や、日産自動車(株)などが見られるように、自動車部品の製造は、大きな柱の一つであるそうです。

3.製造工程を見学!
それでは、特殊鋼の製造手順を、簡単に説明します。

(1)鉄原料・副原料の溶解〜真空脱ガス処理

鉄の原料は、ズバリ「鉄鉱石」です。これは有名なことですが、大同特殊鋼では、鉄鉱石よりむしろ、市中から集めたスクラップ鉄を原料に使うそうです。スクラップ鉄にも、品質のランクがあり、自動車のボディなど、出所がはっきりしているスクラップほど、仕入れ値も高くなるそうです。それらの鉄は、大きな釜に入れられ、ドロドロに溶かされます。大同特殊鋼では「アーク溶解炉」という炉を用いて、雷に似た原理で高圧の放電を起こし、鉄を溶かしています。放電の時に出る音・閃光は、すさまじいものです。溶けた鉄は、釜を移され、真空脱ガス処理をされます。ここで水素などを抜くことにより、鉄の性質をより高めるわけです。また、この段階でサンプルによる成分検査が行われ、商品価値の有無が決定してしまいます。ここで、決められた性質を示さないと、この後の鋳造・圧延などの工程は中止され、ラインからはずされてしまうそうです。 稼動中の溶鉱炉

溶鉱炉の内部

(2)連続鋳造

「連続鋳造(れんぞくちゅうぞう)」というのは、大同特殊鋼が開発した鋳造方法の一つで、溶けた鉄を地上十数メートルのところまで炉ごと持ち上げ、棒状にしながらゆっくり下へ降ろしながら、途中で適宜切断していくものです。最下部は、地下数十メートルで、その高低差は、まるで高層ビルのようです。こうすることにより、従来の方式よりもムダが減り、安定した鋳造が実現できるそうです。また、この設備は非常に大きくて複雑な、日本が誇る鋳造設備ですが、その製造は日立造船が担当しました。造船の技術までもが駆使されているわけです。 オペレーション室

鋳造を終えた特殊鋼

(3)インラインプレス〜分塊圧延

鋳造によって冷やされた鉄は、でっかい塊の状態です。これを「鉄のインゴット」と呼びます。それを目的の形まで加工する工程、その総称が「圧延(あつえん)」です。読んで字のごとく、圧力をかけて鉄を延ばします。前段階としてインラインプレスを行い、熱された鉄に強い衝撃・圧力をかけます。これにより、鉄を鍛錬し、より性質のはっきりとした鉄にするわけです。そして、分塊圧延です。ローラーの上をオレンジ色に熱された鉄が転がり、圧延設備の中を往復します。何度かの往復の後、鉄は単なる塊から、長い棒のようなものに、成形されます。

再加熱された分塊特殊鋼

圧延された特殊鋼

(4)仕上がり検査〜小型(線材)圧延

大きな鉄骨・鉄柱のようになった特殊鋼は、ここで精密な検査を受け、製品としての価値を得ます。普通の製鉄の場合、いくつかのサンプルを検査するのみですが、多品種・小ロット生産のニーズが強い特殊鋼の世界では、鉄骨の1本1本全てにおいて検品するそうです。大きさ、密度、成分など、膨大な検査項目がありますが、コンピュータを使い、素早く性格に検査できるシステムが備わっています。
検査を終えた製品は、そのまま出荷されるものもあれば、受注内容に応じて、さらに細かな部品などへと加工されるものもあります。それらを、小型圧延・線材圧延などといい、小さなものだと、厚さ数ミリメートルのものさえあります。まさに「ダイナミックに精細な製品を作り上げる」それが製鉄工場と言えるでしょう。

(5)見学した感想

僕はもちろん、特殊鋼の加工現場を見学するのは初めてでした。テレビではたまに見かける溶鉱炉ですが、実際のスケールの大きさには、最後まで驚かされました。製鉄は、かつて3K労働などといわれ、敬遠されていましたが、今では高度な自動化が進み、安全に良質な鉄を生産できるようになったそうです。それで職場の環境は改善されましたが、今度は、海外の安い労働力が鉄の価格を下げ、別の形で苦しい状況にあるのが鉄鋼業界です。そんな中で日本が生き残るためには、古くから脈々と受け継がれている職人の知恵と技術、そして現代もなお進化し続けるコンピュータテクノロジ、それらを上手に合わせて、少しでも質の良い、また顧客のニーズに対応できる「特殊鋼」を生産することにかかっています。長時間にわたり説明してくださった、大同特殊鋼知多工場の井崎さんには、団員一同、心から御礼申し上げます。 大同特殊鋼の井崎さん

Reported by Mitsuhisa Takeda.

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