視覚障害のある生徒の歌唱指導について

目的:歌唱に対してやや消極的で、音高が2点ニより上になると苦しげな表情で歌っている視覚障害のある生徒A、Bが、発声法を身に付け、声域(特に高音域へ)の拡大を図るための効果的な指導のあり方を探る。

結果:◆今回の研究を通して、声域を拡大することが歌うことへの自信につながるということが明らかになった。また、視覚障害がある生徒への発声指導は、ない生徒へのそれと特別に異なるというものではないということも分かった。ただ、視覚障害がある生徒は視覚から情報を得ることが難しく、ボディイメージを形成されにくいということから、体の使い方を伝えていくという点において視覚障害に配慮した適切な指導を進めていく必要があるということを再確認したところである。具体的には、(1)実物などを用いて実際に体感させる:体験することにより、より具体的なイメージをもつことができる。(2)視覚障害のある生徒にも分かりやすい(経験したことがあるなど)感覚的用語や比喩表現を用いる。:個々の生徒の能力あるいは経験の度合いにより、使用する用語や表現に幅が出てくる。(3)指導者が体の使い方の模範を示し、生徒たちに触れさせる。または生徒に触れて伝える。:思春期の生徒には羞恥心があり、必ずしも最良の方法であるとは言いがたいが、体の使い方を知るためには有効である。などの事柄が挙げられる。また、本研究において以下の事柄の検討が課題として残った。(1)高音域の歌声の安定と声量の増大を図る指導法(2)指導者や生徒自身に触れなくても体感できるような指導法(3)歌うことに対しての苦手意識や恥ずかしさがある生徒への指導法(4)他教科や自立活動等との関連のある音楽の指導のあり方◆これらのことを踏まえて、今後も視覚障害のある生徒への歌唱指導の実践を積み重ね、より効果的な指導のあり方を探っていきたい。