自閉症児の文章のあらましを理解する力を高める効果的な支援の在り方

目的:本児が文章のあらましを理解するための学習を継続して行い、相手に内容が伝わるような文章を書くことができるようにしたい。そして、相手が言っていることやしていることの状況を理解し対応できるようにすることで、コミュニケーションの問題を軽減し友人達とのトラブルを少なくしていきたい。思い出したり話したり、読んだり書いたりすることにより、日常生活に役立つことばの理解力を向上させ、場に合った行動をすることができるようにしたい。そのためには、どのような支援が効果的なのかを探っていく。

結果:◆コミュニケーション:以前に比べ、相手が言っていることは大体の内容を把握できるようにはなってきている。また、決まった相手だと、ある程度会話をしたり、質問を受けて答えることができるようになってきている。しかし、相手が変わるとコミュニケーションがうまくとれなかったり、担任のことば掛けや支援が必要となることも多い。また、質問に対して正しく答えようとする相手がまだ限られている。在籍学級担任や協力学級担任等の質問には、内容を受けた受け答え方ができるようになってきているが、他の教職員や友人等に対してはまだきちんと受けて答えることは少ない。今後も継続して学習を進めることで、コミュニケーションをとれる相手を増やすようにしていきたい。◆友達とのトラブル:以前に比べるととても少なくなり、泣いて在籍学級に来たり、友達を拒絶したり叩いたりすることも、あまりみられなくなってきている。少しずつ回りの状況がみえるようになってきているように感じる。しかし、友達等の話の内容は、段々高度になっていく。それに対応していくことは、学年が進むほど難しくなっていく。相手が何を言っているのかを理解できない場合は、教師の支援が必要である。また同時に、分からないときは「分からないからもう一度言って欲しい」と、自分から言える態度や能力を育てることも必要である。また、今後本児がトラブルを起こしたときはどのような状況だったのかどうしてトラブルが起きたのか相手はどう考えどう行動したのか等を、具体的な場面で考えさせトラブルの減少に努めていきたい。◆文章のあらましを理解する:自分が行った活動や身近な場面については、内容のあらましを理解できるようになってきている。しかし、文章が複雑になった場合や抽象語等の理解は難しく、内容を把握しきれないままに学習を終えることがある。現段階では、理解できることを一つずつ押さえながら支援を継続していきたい。また、自分の生活と結びつかない内容の学習等は、支援を行っても理解することが難しい。学習内容を把握することは、学年が進み教材の内容が難しくなるに伴いさらに難しくなっていく。その時々の本児の発達段階を考慮しながら、少しでも上の段階へと進んでいけるような支援を継続して行いたい。◆文章化:日記や作文等の活動を段階的に継続したことで、自分の活動等は一人でも順序よく思い出しながら、正しく書けるようになってきている。また、事前にポイントを押さえる活動を行うと、支援がなくても自分で長い文章を書けるようになってきた。しかし、現段階では順序よく書く活動を中心に行ってきたので、内容は活動したことの羅列で、支援を受けないと文章にふくらみがない。今後は羅列ではなく、活動したことの中から特に書きたいことを選択し、内容をふくらませて文章化できるよう支援を行っていきたい。また、文章に記載されていない気持ちや様子等を考えたり、これからどうなるかを推察したりする活動は、本児にとっては大変難しい。日常生活等で、教師が本児の体験したことや気持ち、回りの状況や相手の気持ち等を言語化し提示していきたい。◆その他:発達段階や実態に合わせて段階的な活動を継続したことで、自分で文章を話したり書いたりする際に必要な、基本的なことが身に付いてきて、日常生活で活用できるようになってきている。また、自分から教師にいろいろな質問をして、その答えと自分の答えや考えを照らし合わせることができるようになってきている。生活の中で場や相手に応じた挨拶や会話ができるよう、色々な場面で具体的な練習を行った。家庭と連携して、意識してこちらから挨拶するようにしたことで、朝、教師に会ったときは「おはようございます」と自分の方から言えるようになった。さらに場や相手に応じた挨拶や会話の日常化を目指していきたい。