反社会的問題行動に対する効果的な対応に関する研究

目的:反社会的問題行動を起こす生徒に対して効果的な対応が行えるようにするために、いくつかの代表的な事例における指導の在り方を調査・分析し、それぞれに対して効果の高い対応について検討する。

結果:中学校において指導の機会が多い反社会的問題行動に対する効果的な対応を探るため、カウンセリングの技法に基づいた教師の対応法と改善の要因の関係を、生徒の様子の変化から分析し、次のような特徴が明かになった。成功事例での対応法を見ると、飲酒・喫煙・万引きといった違法行為に関しては各段階間で有意な差が見られ、現実原則に重点がおかれていた。また、授業抜け出しでは受容的な対応が感情を伝えていく対応よりも、器物損壊では現実原則を示す対応が他の対応よりも重点がおかれていた。問題行動毎に対応を組み合わせており、組み合わせの乏しさや共感的部分の弱さが一概にはいえない。カウンセリングの技法に基づいた対応法と、これまで経験で積み上げられた改善の要因が生徒の変容に及ぼす効果をパス解析によりまとめたところ、カウンセリングの技法に基づいた対応法と改善の要因の関係が浮き彫りになり、その関係も1対1対応ではなく、一つの対応法が複数の改善の要因や生徒の様子の変化に効果を与えていることが分かった。分散分析では対応法の間で差がみられなかった反抗や生徒間暴力、対教師暴力といった暴力行為は、生徒の様子の変化にマイナスの直接効果がみられたり対応法からの直接効果がみられたり、対応法からの直接効果が弱かったりという特徴がみられ、対応の苦慮につながっている原因が一部明らかになった。それと同時に、マイナスの効果を回避するパスの存在が明らかになり、指導の成功につながった要因をうかがうことができた。