高校生の大学における聴講の効果と意義

目的:高い進路目標達成率の背景には様々な要因があるが、その一つとして受講生徒の進路に対する意識があると思われる。そこで高大セミナーの受講が、生徒の進路意識に与えた影響を探る。また、高大セミナーの受講は、生徒の大学での学業にも影響を与えているのではないかと考えられることから、研究の目的を以下のとおり設定する。(1)受講が、生徒の進路意識に与えた影響を探る。(2)受講が、生徒の大学進学後の学業に与えた影響を探る。

結果:◆「高大セミナーによる進路意識の変化」(1) 「進路意識の質的変容」では、高大セミナーの受講生徒の進路意識について、以下のことが分かった。受講の前と後では、「進路意識の深まり」が見られた。受講前の動機は、大学や学問に関する抽象的・表面的なことを理解することであったが、受講後は大学で求められる力や姿勢など大学自体の性格や本質的なことを理解するようになった。このことは同時に進路に対する不安や悩みの解消に役立っている。進路の目標の確立でも、自己の生き方や成長と結びつけて考えるようになった。また、進路目標を実現させるため学習意欲の向上をもたらした。(2)「進路意識の時間的形成」では、受講生徒には、時間的な「進路意識の早まり」があることが分かった。受講生徒は1年次より進路に関する体験活動に参加しており、進路の探索行動が、非受講生徒よりも積極的であった。また、1年次の「職業体験ゼミ」と2年次の高大セミナーの体験は、進路希望との関連が強かった。◆「大学入学後の意義」では、大学における学業生活への影響を調べた。高大セミナーの受講は、進路の適切な選択をもたらすばかりでなく、大学での学業や人間関係などの下地になるなど、大学生活にスムーズに移行するうえで役立つことが分かった。