中国人児童を対象とする「JSLカリキュラム」の授業の試み

目的:滞日3年半を経過し、日本語が優勢言語になっている「学習参加が困難」な一児童を対象に実施したトピック型JSLカリキュラムに基づく授業を実践し、対象児童の課題である「ことばで思考する力」と「日本語で表現する力」がどのように変容したかという観点から授業を振り返り、そのような結果をもたらした要因を探ることを通して、トピック型JSLカリキュラムの有効性と実践上の課題について考える。

結果:授業の中で児童は、これまで本人にとって課題とされてきた、因果関係を考える、情報を統合して結論を出す、意見の根拠を明確にして他者に伝えるなどの活動を行うことができた。授業結果の考察から、このような対象児童の活動を支えていたのは、JSLカリキュラムが主張する「児童の興味関心にあったトピックを選択する」「具体物の使用や直接体験を重視する」「学習した内容を他者に向けて発信する活動を重視する」という点であったと考えられる。しかし、一方で日本語で学習に参加する力を高めるためには、支援者と子どもの間の相互作用の質が重要であることが示唆された。