多文化音楽教育をめぐる日本の現状と教師の認識

目的:外国にルーツをもつ生徒への教育を行っている中学音楽科教師を対象とした質問紙調査を行い、それを通じて、日本における多文化音楽教育の現状や問題点、また、教師の認識などについて検討する。さらに、調査結果と先行研究による成果を結合させることによって、今後の多文化共生社会における音楽教育のあり方や教師の役割について考察する。

結果:外国にルーツをもつ生徒への教育を行っている中学音楽科教師を対象とした質問紙調査を行った結果、(1)外国にルーツをもつ子どもをめぐる音楽教育の問題が「言葉の問題」のみに置き換えられ、それを中心に対応がなされていること(2)「外国にルーツをもつ生徒がいる教室における音楽教育」を多文化理解教育として位置づけている教師が多いものの、具体的な取り組みや対応はなされない傾向にあること、が示された。その結果を踏まえて、今後の多文化共生社会における音楽教育おいては、文化的背景を異にする人々の「共生」を志向する多文化音楽教育の考えのもと、音楽を学習することを通して、さまざまな子どもたちの文化的背景やそのアイディンティティを尊重する教育がなされなければならないことを示した。あた、そのためにも、教師は異文化間トレランスを身につけ、マジョリティ集団に対してもその能力を育成させる力を持つことが必要である。