自分の生活とのかかわりから社会的事象をとらえ、追求していく子どもを育てる社会科学習

目的:社会科の学習において、自分の生活とかかわらせて社会的事象の意味を追求していく子どもを育てるために、社会的事象との出会いの場面を工夫し、子どもの問いを生かした単元構成の中で、調べた事実から考え合う場を設定するとともに、学習過程の中に評価規準を明確にした形成的評価を取り入れることが有効であることを実践を通して明らかにする。

結果:◆驚きや疑問が生まれるような社会的事象との出会いの場面の工夫(1)成果:素材との出会いの場面では、身近な「村の水道」を素材として取り上げたり「構成11市町村、の白地図」の提示の仕方を工夫したりして、子どもたちの既知事項や生活意識に揺さぶりをかけることにより、普段意識することのない水道についての問題意識を立ち上げることができた。(2)課題:子どもの気付きを取り上げ、問題意識へつなげるための発問の投げかけ方と、子どもの素材への意識のとらえ方が不十分であった。気付きを見逃さないためにも、子どもの発言をより具体的に想定した計画が必要ではなかったかと考えている。◆体験的な学習を通して新たな問いを見い出し追求していく問題解決的な学習の工夫(1)成果:調べた事実をもとに、子どもに新たな問いを見い出させ、社会的事象の意味を追求させていくことにより「働く人たちの願い」という視点で、働く人々の工夫や努力の意味や目的をより深く、考えさせることができた。(2)課題:子どもたちは働く人々の工夫や努力について考えていたが「広域で協力することの良さ」という見方が弱かった。ねらいとする社会的事象の意味に子どもの意識を向けさせるためには、子どもの問いを生かしつつも、調査活動の計画を立てる段階で、様々な疑問の中から問題意識の焦点化を図る必要性があると考える。◆調べた事実と生活とのつながりを考え合う場の設定(1)成果:子どもたちは、これまで調べて考えてきた「働く人たちの願い「水の安全性「安定供給」とい」」う具体的事実をもとに、自分の生活とのかかわりから考え合うことにより、働く人々の工夫や努力の意味や目的について、新たな視点でとらえ直し、考えることができるようになった。(2)課題:子どもの発言内容から、その意図する見方や考え方をとらえて授業を構成することが不十分であった。子どもの内に起こっている学びを見逃さないためにも、授業のねらいを明確にし、子どもの発言をより具体的に想定した授業構成が大切である。◆子どもの考える力を育てる評価の工夫(1)成果:評価規準を設定し、評価方法と場面を明確にすることにより、一人一人の子どもたちの見方・考え方の良さを認め、具体的に意味付けすることができ、考える力をより確かに身につけさせることができた。また子どものポートフォリオ作りとしての新聞作りでは「水の大切さ」について、自分のテーマを決め、自分の見方・考え方をまとめていた。そして、働く人々の工夫や努力、社会の一員として自分が生活の中でできる工夫や決意について考えるようになってきた。(2)課題:新聞作りの初めの段階で、自分のテーマと取り上げた内容の関連性が見い出せず、苦労していた子どもがいた。具体的な子どもの学びの姿を想定した評価規準をもとに、子どもの一番心に残ったことを具体化させ、関連付けて考えるよう、支援していった。