造船の歴史と「船」の安定条件についての授業研究

目的:生徒は、物理現象の分析をテーマとした原典を解釈する活動や、数学史の学習を通して数学観が変容するかを考察する。目的達成のため、以下を課題とする。課題1:物理現象を分析しているアルキメデスの原典のT.L.Heathの英語訳である「On Floating Bodies(浮体について)」の解釈と、そこに記載されているような状況を道具を用いて再現することで、生徒は物理現象と数学の関わりを見出し、自ら発見し、体験する喜びを味わうことができるかを考察する。課題2:生徒は、数学史(造船の歴史)を用いた学習によって、数学と人間との関わりを通して、数学のよさを感じることができるか考察する。課題3:課題1、2を受け、数学が身の回りに存在し、日常の中に存在していることを実感することができるかを考察する。課題4:アルキメデスの物理現象の分析方法を追体験することにより、現象に対するアプローチの現在との違い、共通点を知ることにより数学に対する新しい考え方を得ることができるかを考察する。

結果:本研究では、アルキメデスの「浮体について」とヴァーサ号転覆沈没事故という歴史事実による教材化を行い、道具を用いることにより、生徒は自ら体験し自ら発見する数学的活動の楽しさを見出し、人の営みとしての数学を認識した。また、「異文化体験」や「解釈学的営み」の観点から古代の数学(異文化)を体験することで現代の数学(自文化)を自覚し、「自らの数学文化」の価値を認める事ができたことが示された。